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“未完成を設計する” 挑戦、HalfMadeThemes 開発録

ども、どもども、西山です。
気がつくと前回の記事から4ヶ月も経っていました(汗)

というのも…
実は今年5月頃から11月にかけての約半年間、それまで温めていた弊社新プロダクト「MovableType.net専用テーマ」の開発に取り組んでいたのです。

そして先日、11月10日(月)に「MovableType.net専用テーマシリーズ HalfMadeThemes」を正式リリースすることができたので、今日はその開発ストーリー的なところをご紹介していきます。

PRTIMESで配信したプレスリリースはこちら

弊社のリリース記事はこちら

MovableType.net専用テーマシリーズ「HalfMadeThemes」を正式リリース
その第1弾となる『TYPE: ALPHA』のリリースを記念して、2025年12月末まで本体ライセンスおよび拡張ライセンスが、30%OFFになるキャンペーンを実施中
https://www.juxtaposition.co.jp/new-arrivals/2025/11/10-093000.html

ちなみに偶然が重なった結果ですが、11月10日は私が崇拝してやまないデーモン閣下のご発生日。
しかも今年は大安という、なんともめでたい(忌まわしい?笑)日にリリースすることができました(笑)

閣下、10万63歳のご発生日、謹んでお呪い申し上げます。

Table of Contents

HalfMadeThemesシリーズとはなにか

HalfMadeThemesシリーズは、ウェブサイトの制作時に「最小のコストと最大のパフォーマンスを、最短で実現する」ことを目指したプロダクト。
0でもなく100でもない、フルスクラッチ構築とデザインテーマ構築の間を埋める「カスタマイズを前提としたテーマ」をコンセプトにしたMovableType.net専用テーマシリーズです。

MovableType.netにインストールすることで、デザイナーやマークアップエンジニアの方々が、MTテンプレートに触れることなく柔軟なカスタマイズを実施できるのが最大のポイントで、カスタムフィールド/カスタムブロックの操作のみで、柔軟なウェブサイト構築に対応できるテーマとなっています。

HalfMadeThemesはデザインテーマの形を取っていますが、この「デザイン」は装飾を意味するそれではなく「設計」を意味しており、初期構築コストを大幅に削減しつつ、高い品質と拡張性を備えたウェブサイトを構築することを可能にするプロダクトとして開発しました。

HalfMadeThemes TYPE: ALPHA

その第1弾としてリリースしたTYPE: ALPHAは、一般企業はもちろん、医院や士業などさまざまな業種での利用を想定した汎用テーマ。
およそ5ヶ月間、こだわり抜いて開発した、シリーズ第1弾にふさわしい出来となっています。

HalfMadeThemes TYPE: ALPHAの製品概要や仕様詳細などは、こちらのデモ・ドキュメントサイトでご覧いただけます。

2025年12月31日(水)まで、リリース記念キャンペーン(ライセンス費用30%OFF)も実施していますのでお見逃しなく。

なぜ今、デザインテーマなのか?

弊社がデザインテーマの提供を始めたことをうけ、少なくない方が「なぜ今さらデザインテーマなの?」と思ったことでしょう(苦笑)
あるいはMovable Typeユーザーであればなおのこと、そのような疑問を持つことも不思議ではないとワタシも思います。

結論から先に言うと、特にMovable Typeを用いたウェブサイト制作の現場において、私は第三の選択肢が必要になったと考え、HalfMadeThemes構想をスタートしました。

Movable Type の文化的背景

そもそもMovable Typeは、リリースされてからの二十余年、その自由度の高さと堅牢なセキュリティ性能からフルスクラッチ構築が主流となっていて、数多くの中〜大規模なウェブサイト構築案件で利用されてきましたが、それゆえサッと作って公開する用途では使われにくい傾向にありました。

フルスクラッチ構築が中心となり、デザインテーマを活用した構築が限定的なものとなっていた結果、Movable Typeを用いたウェブサイト制作の現場では「デザインテーマを利用する=簡易ウェブサイトを作る」という印象が定着してしまっていたんじゃないでしょうか。

また、2014年11月に登場したSaaS型CMS「MovableType.net」は、保守性やセキュリティ面での評価が高く、コストパフォーマンスにも優れていたことから、小〜中規模案件での導入が進みましたが、やはり制作現場では依然としてフルスクラッチ構築が一般的で、シックス・アパート社が提供する公式テーマも存在していたものの、それらを活用した構築手法はあまり利用されていなかったように思います。

他方、WordPressには美しく機能豊富なサードパーティ製のデザインテーマが数多く揃っており、フルスクラッチ構築とデザインテーマ構築のいずれもが自然と受け入れられ、WordPressを利用するウェブサイトの規模を選ばない土壌が多かったことも、数多くのウェブサイトで導入されるようになった要因の1つになったのだろうと思います。

制作現場が抱える2つの選択肢

先のようなMovable Typeにおける文化的背景もあり、少なくとも弊社においては、フルスクラッチ構築とデザインテーマ構築の間で悩むことも少なくありませんでした。

例えば創業したばかりの企業や、事業規模がまだ大きくない企業からのご相談や、あるいは一時的な情報公開を目的とするウェブサイトの相談などでは、フルスクラッチ構築におけるコスト(費用・時間)がネックになってしまうことが何度かありました。

フルスクラッチ構築は、顧客の望むものを提供しやすい反面、必要となるコストを一定以下に下げることが難しいケースも多く、「顧客の要望は叶えたいが、コストが圧倒的に見合わない」といった状況になっていました。

どうしても叶えたいと思う要望であれば、限界以上に価格を下げたり、寝る間を惜しんで構築作業を続けるということも不可能ではないかもしれませんが、その状態を長く続けることは難しいでしょう。

他方、それらの条件をクリアする手段としてデザインテーマを利用した場合、確かにウェブサイトは完成するかもしれませんが、デザインテーマの制約にあわせ、ちょっと手を加えた程度のカスタマイズとなってしまうことも少なくなく、結果的にそれが思っていた成果を生むのか、という点においては多くが疑問を残さざるを得ない状況になっていました。

そのためデザインテーマを使用する際も、「短納期・低価格だけれど高品質で拡張性の高いもの」を作ろうとすると、やはりそれなりのコストをかける必要があり、手段の1つとしてデザインテーマを選択するのが難しいものとなっていた側面もありました。

時代の変化と技術の進歩

ウェブサイト制作の現場における前提が、大きく変わりつつあります。
ここ数年で、STUDIOやWixのようなノーコード・ローコードと呼ばれるツールが普及し、特別な知識を有することなく、誰でも一定レベルのウェブサイトを構築できるようになりました。
また生成AIの普及により、デザインやコーディングにおいてもそれらを支援するツールが数多く登場し、その流れに拍車をかけたと言えるでしょう。

そのような影響もあり、比較的小規模なウェブサイトの制作現場では「短納期・低コスト」が当たり前の期待値として認識されるようになってきました。

Movable Typeを用いたウェブサイト構築のように、フルスクラッチ構築を当たり前としている現場において、これを実現するのは簡単なことではありません。
また、それらを用いた成果物についても、少なくとも今はまだ納得できる水準を満たすにはある程度のコストをかけざるを得ないというジレンマを感じている方も多いのではないでしょうか。

高い品質と構造化のニーズ

2024年4月の「障害者差別解消法」改正により、民間事業者にも「合理的配慮の提供」が義務化されたことをうけ、ウェブサイトにおいてもそのアクセシビリティ対応が強く求められるようになりました。
ウェブサイトにおけるアクセシビリティ対応については、技術的には決して難しいものではないと考えられる一方、一定以上のアクセシビリティ基準を満たす品質を確保するには相応の知識とコストが必要となります。

また、先ほどもあった生成AIの登場は、これまで主流となっていたブラウザ検索(SEO)や地図検索(MEO)、SNSからのウェブサイトへの流入に加え、生成AI検索(GEO/LLMO)によるウェブサイトへの流入を増やすことにつながり、マシンリーダブルな構造への対応(セマンティックな構造/構造化データ/Schema.org)が、これまで以上にウェブサイト構築時に求められるようになりました。

アクセシビリティ対応やマシンリーダビリティな構造への対応を踏まえると、ウェブサイトを「ちゃんと作って」「ちゃんと運営していく」ことが思っているよりも簡単ではない時代になったと言えるでしょう。

MovableType.net ブロックエディタの可能性

2020年にMovableType.netで導入され、現在はMovable Type(ソフトウェア版/クラウド版)でも利用可能となっているブロックエディタ。
私はそれを利用していく中で、ここまでに書いてきた背景と時代のニーズを合致させたプロダクトが、MovableType.netであれば提供可能ではないかと考えるようになりました。

ブロックエディタのリリース当初から、弊社ではクライアントからの依頼に基づくウェブサイト構築業務で利用していましたが、そのノウハウを蓄積していく過程で、「どのウェブサイトにも共通して利用できるブロックエディタの構築方法」のようなものが具体化してきました。

誤解を恐れずに言うのなら、ナビゲーション構造やデザインなどの違いはあれど、コンテンツを構築する構造部分(ブロックエディタ構造)に限って言えば、ほぼすべてのウェブサイトにそれほど大きな違いはないと思うようになってきたのです。

その結果、弊社では汎用的なブロックエディタ構造を準備することで、初期構築における大部分(詳細なレイアウト設計等)の時間的コストを削減し、コンセプト立案や動線設計、コンテンツの制作に時間を費やすようになり、それまでよりも質の高いウェブサイトを構築することができるようになりました。

HalfMadeThemesが目指すもの、目指すこと

2004年の創業以来、Movable Typeを使い続けてきた弊社にとって、先述した文化的背景と2つの選択肢はとても悩ましいものでした。
また、技術の進歩によるウェブサイト構築手法の変化や、時代に求められるクオリティの担保もまた、制作におけるコストバランスを考えたときに悩ましい部分がありました。

そのような中で、MovableType.net(Movable Type)のデザインテーマを用いた「短納期/低コストでありながら高い品質と拡張性を保持したウェブサイト構築手法」の確立に至ったと言えます。

私は、HalfMadeThemesを製品化して開発・提供することで、MovableType.netをプラットフォームとしてウェブサイト構築を行っている制作会社、あるいはデザイナー・マークアップエンジニアの方々、自身でウェブサイトを構築する事業者さんと、MovableType.net(Movable Type)とHalfMadeThemesを利用したウェブサイト構築のエコシステムを実現できると考えています。

HalfMadeThemesを使用して「デザインテーマにおける制約のもと短納期・低コストを実現する」のではなく、「カスタマイズを前提としつつ必要なところへコストを投資するためのツール」として、このデザインテーマを存在させたい。

そのために、ウェブサイト構築時の初期構築コスト(特に設計部分)に割いていたコストを、本来取り組むべきコンテンツの制作に充てられるだけでなく、それに付随して短納期/低コスト、高い品質と拡張性を担保するウェブサイト設計の新しい選択肢として、HalfMadeThemesを育てていきたいと考えています。

冒頭にも書いた通り、HalfMadeThemesはデザインテーマの形を取っていますが、この「デザイン」は装飾を意味するそれではなく「設計」を意味しています。
つまり、いわゆるデザインテーマではなく設計されたテーマこそが、フルスクラッチ構築でもデザインテーマ構築でもない、HalfMadeThemesの目指す「新しい第三の選択肢」であると言えます。

今後の展開・展望

第1弾としてリリースしたTYPE: ALPHAに加え、今後以下のテーマをリリース予定です。

  • TYPE: GAMMA
    一般企業や各種施設など向けに幅広く利用可能なテーマ
  • TYPE: MU
    スマートフォンでの閲覧に特化したレイアウトを採用したテーマ
  • TYPE: SIGMA
    各種団体や比較的規模が大きめのサイトを想定したテーマ

また、これは少し先になる想定ですが、デザインカスタマイズを前提としたHalfMadeThemesに加え、完成されたデザインテーマ:ReadyMadeThemes構想も進めています。

ここまで読んでくれた皆さんへ

およそ6,500文字、原稿用紙にして16枚もの文章をここまで読んでくれてありがとうございます!
久々にここまで長い記事を書きましたが、書きたいことが次から次へと溢れ出てきて、正直なところ収拾がつかないのでこの辺にしておきます(苦笑)
このHalfMadeThemesが、皆さんの役に立つことを願っています。

開発に関わってくれた弊社のメンバーへ

この半年間、HalfMadeThemesのリリースという目標に向け、一緒に頑張ってくれたデザイナー、マークアップエンジニア、MTテンプレートエンジニアには本当に感謝しています。
小さなことにもすごくこだわって、およそ妥協した部分はないと言える状態で、TYPE: ALPHAをリリースできたことは非常に嬉しく、皆がいたからこそ完成できたと誇らしい気持ちになっています。あらためてありがとう。

これから関わってくれるかもしれないあなたへ

そして、HalfMadeThemesに興味を持ってくれた皆さんにもとても感謝します。
Movable Typeの周囲ではあまり聞き馴染みがないと言って良いであろうデザインテーマへの挑戦はまだ始まったばかり。
ただ、きっと近い将来、皆さんに選んでもらい、HalfMadeThemesがあって良かったと思ってもらえるプロダクトになるよう、ブラッシュアップを続けていきますので、機会があればぜひ利用してみてください。

さらに詳しく知りたい方へ

まだリリースしたばかりのHalfMadeThemes、弊社ウェブサイトでのご紹介も現状はシンプルなものになっています。
製品について詳しく知りたい、自分たちが関わるウェブサイト構築のフローがどう変わるのか知りたい、そうお考えの方はぜひ、HalfMadeThemes TYPE: ALPHAのデモ・ドキュメントサイトをご覧ください。

そして、2週間後の11月29日(土)に開催されるMTDDC Meetup TOKYO 2025では、HalfMadeThemes開発に至った経緯や目指しているところ、その設計思想までをご紹介するセッションを私が行いますので、こちらもぜひご参加ください。

私のセッションは、RoomC 14:40〜 "未完成"というもう1つの選択肢、MovableType.net専用テーマ「HalfMadeThemes」です。

こちらもどうぞお楽しみに!

Web illustrations by Storyset

にしやま やすふみ

札幌のウェブサイト・ホームページ制作会社 ジャクスタポジションで、代表とディレクターやってます。Movable Typeとラーメン、ザンギ、酒が好き。
プロフィール詳細はこちら

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